修繕しごと3 〜大鍋錫引き編〜

冬越ししてしまった大鍋の錫引き。修繕の仕事は、たまに受けていますが、これだけ大きな鍋の錫引きを受けたのは初めてでした。

大きさだけでなく、重さもズッシリ。およそ10キロ!薬品を使い汚れを落とすなどの方法もあるのですが、それは大鍋が入る大きな容器でないことと、食の道具なのでできる限り薬品を使わずに作業を遂行したい。そうなると手間もかかります。手掛ける面積が広い上に、手作業なので輪をかけて時間がかかるというわけです。

でも、道具として長く使えるよう考えて作られたものであるのは作りを見ればわかり(この銅鍋はヘラ絞りで製作されたものでした)、それを更に使い続けたいという、料理で人を喜ばせることのできる人がいる。。。。自分が持っている技術でその橋渡しができるのであれば、それはとてもやりがいのある仕事だと思っています。

話は戻って、、、

なぜ冬越ししたかという言い訳を。

錫引きの作業は、完全に銅鍋の汚れ油分を取り除いた後に、熱した銅鍋の中に錫を入れて溶かし真綿で伸ばします。が、いくら銅鍋の熱伝導がいいとしても、これだけ大きな鍋だと表面の温度差がでやすい。温度差があると、錫を均一的厚さで伸ばせないのです。

スタジオは、冬場は極寒のため、火から遠い部分は温度が下がりやすい。

なので、気温が上がってきた春の、風がない湿度の低い日を狙って作業を行いました。

水洗いの後。

錫を全体に引き伸ばすことが出来ました。底には使い込んだ傷がたくさんあり、それをなくすために削ってしまうと銅の厚みが薄くなるため、傷が残っていても油分と汚れを取り除いた段階で錫引きしました。

傷と言えば傷かもしれませんが、それは人が使ってきた証しだとも言えます。

そして、ここから“磨き”の大仕事が、、、。

次号に続きます!

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